没後110年 カリエール展

 初期の作品はベラスケスなどのスペイン画家の影響を受けているとのことであるが、それらしき作品は特に見当たらない。むしろ展覧会全体は穏やかなセピア色で覆い尽くされており、自己主張の激しいスペイン絵画の影響は影を潜めている。

 

 フランス象徴主義を代表する画家(であるらしい)カリエールであるが、本展覧会の作品の中に宗教や神話などの題材と結びついたものはなく風俗画ばかりであった。

そのなかでも特に母子もしくは子供を描いた作品が目立った。母子や親子を題材とした絵画というと、同時代のベルト・モリゾが思いつくが、彼女の作品とカリエールの画風は随分異なる。

 

 背景は削り取られざらざらとした質感が目立ち、一方で人物はのっぺりと描かれている。顔のパーツをそぎ落とし表情もほとんどわからない作品が多い。じゃあ母子はよそよそしく描かれているのかというとそうでもなく、赤子が母に回した手の表現には親子の絶対的信頼を感じる。

後期の作品になると、形態は背景に溶け込み幻想的になっていく。